Londonリポート Vol.7 人と比べない教育
ロンドンの幼稚園で働き始めて約1年が経った頃。
ロンドンのチェルシー幼稚園の、ちょっとのんびり屋のデイジー。
7月のある日、9月から小学校に行くはずの、彼女が小学校に行かずに、もう一年幼稚園に行くことになったということを聞きました。
デイジーとお母さんが話し合った結果だというのです。
そのことをそれとなく、お迎えに来たデイジーのお母さんに聞いてみました。
「この子はまだ、小学校に行くのに充分に成長していないのよ。だからもう一年、幼稚園で彼女のペースで成長するのを待つことにしたわ」 と、笑顔であっさりと答えます。
少しも気にしていない様子。
そのことをデイジーにも、それとなく尋ねると、
「うん、そうなの。もう少し幼稚園で過ごしてから、大きい学校にいくの。」
親も気にしていないので、子どもも少しも気にしていない様子。
先生も、周りの子どもたちもちっとも気にしていません。
これが日本だったらどうでしょう?
日本の学校を観察した、アメリカの発達心理学、幼児教育学者のスーザン・ハロウェイは、日本のことを 「人と違うだけで、いじめられる奇妙な国」と研究の中で述べています。
日本と欧米ではいじめられる原因が違っているというのです。
確かに、日本では、人と違うことをしないように、人と違わないように細心の注意を払い、隣の家の子どもが買ってもらったからと、おもちゃを自分の子どもにも買い与えることが多いように思います。
イギリスをはじめ欧米では、
人と違うからこそ、その人の存在意義があるという考えが定着しています。
イギリスの先生が授業中、 子どもが隣の人と同じ意見を言った時
「それは、前の人が言ったわよね。何か違う意見はない?」
と、違う意見を言うように求めているのを見て、私はとてもびっくりしました。
人と同じではいけないと先生は言うのです。
違って当たり前。
だから人とも比べません。
文部科学省が掲げる 「個性を大事にした教育」。
個性っていったい何でしょう。
どうしたら個性って育つのでしょう?
その言葉の意味を、もう一度問い直してみなければならないようです。